ビタミンKは、血液凝固因子や骨のたんぱく質が働くための反応を助ける脂溶性ビタミンです。野菜に多いK1と、納豆などに含まれるK2の仲間があり、日本の基準は両方を対象にしています。1
ただし、血液凝固に必要な量と、骨折を防ぐために追加する量は同じ問いではありません。成人の目安量150µg/日を、成分の形、たんぱく質への作用、食品の数え方から見ていきます。1
K1とK2は、よく似た構造を持つ別の形
天然のビタミンKには、フィロキノン(K1)とメナキノン類(K2)があります。同じ基本構造を持ち、そこにつながる側鎖の形や長さが異なります。メナキノンのMK-4、MK-7などの番号は、その構造の違いを表します。1
| 形 | 食品との関係 |
|---|---|
| フィロキノン K1 | 緑色の葉野菜などに含まれる。 |
| メナキノン-4 K2 | 動物性食品などに広く含まれる。 |
| メナキノン-7 K2 | 納豆菌が作る成分。納豆に含まれる。 |
K1、MK-4、MK-7では、吸収率や血中半減期などが異なります。半減期とは、血中濃度が半分になるまでの時間です。日本の基準は、それぞれの生理活性の相対的な換算が難しいため、K1とK2を区別した推奨量ではなく、合計の目安量を設定しています。1
凝固因子を働ける形に整える
ビタミンKは、たんぱく質中の特定のアミノ酸にカルボキシ基を付ける酵素の補酵素として働きます。補酵素とは、酵素が化学反応を進めるときに必要とする助け役です。この修飾によって凝固因子がカルシウムと結びつき、正常な凝固に関われるようになります。1 2
つまり、ビタミンKが血液を物理的に濃くするわけではありません。出血時に必要な一連の反応の中で、たんぱく質を働ける形に整える役割です。欠乏すると血液凝固が遅れ、出血しやすくなることがあります。1
骨にあるオステオカルシンや、血管などに関わるMGPというたんぱく質も、ビタミンKに依存する修飾を受けます。しかし、それらの仕組みや血中指標が変わることだけで、一般の人への追加摂取による骨折・心血管疾患の減少まで証明されたことにはなりません。1
腸内細菌が作っても、食事が不要にはならない
腸内細菌もメナキノン類を作ります。ただし、人のビタミンK栄養にどの程度寄与するのか、腸管でどのように吸収されるのかは十分に分かっていません。日本の食事摂取基準は、その分を必要量から差し引く計算をせず、口から摂るビタミンKを対象にしています。1
また、食事中の成分量と実際の利用量も同じではありません。脂肪の消化・吸収に関わる病気、加齢に伴う条件、服薬などによって、一般の健康な集団の目安をそのまま使えない場合があります。1
成人の目安量150µgは、納豆非摂取者の研究を基にする
日本の2025年版では、必要量の分布から推奨量を算定するだけの資料が十分でないため、目安量を設定しています。基本となる考え方は、正常な血液凝固を維持することです。1
納豆を食べる人と食べない人では、ビタミンK摂取量の分布が大きく異なります。基準の算定では、納豆を食べない集団でも明らかな健康障害が認められないことを踏まえ、その集団の平均摂取量である約150µg/日を採用しました。ただし、基になった研究は20歳代女性を対象としたもので、他の性別や年齢に関する資料が十分にあるわけではありません。1
| 対象 | 目安量 |
|---|---|
| 18歳以上の 成人男女 | 150 |
| 妊婦 | 150 |
| 授乳婦 | 150 |
妊婦・授乳婦の150µgは、年齢別の値に上乗せする付加量ではありません。また、この目安量は骨折や血管の石灰化を防ぐための最適量を示した値でもありません。高齢者についても、別の値を決めるだけの資料が十分でないため、成人と同じ値になっています。1 3
納豆と葉野菜の食品値を読む。服薬中は別の判断が必要
ワルファリンを服用中の人は、ここで示す食品例を追加する提案として使わないでください。PMDAは、納豆・クロレラ食品・青汁がワルファリンの作用を弱めるため、摂取を避けるよう説明しています。納豆は、薬を飲む時間と間隔をあければよいという扱いでもありません。食事の具体的な管理は医師・薬剤師の指示に従ってください。4
以下は、成分表の数字と食品の形を結びつける計算例です。一食に食べるべき量や、全員に勧める組み合わせではありません。5 6
| 食品・仮の量 | ビタミンK量 |
|---|---|
| 糸引き納豆40g | 240µg 600µg/100gから計算 |
| ほうれんそう ゆで50g | 160µg 320µg/100gから計算 |
食品成分表では、納豆に含まれるMK-7を、分子量の比を使ってMK-4相当量に換算しています。上の240µgを、240µgのMK-7そのものが入っている数字と読むことはできません。日本の基準と食品値の合計は、このような数え方の上にあります。1 7
ワルファリン服用中は、その他のビタミンKを多く含む葉野菜の摂り方についても確認が必要です。自己判断で野菜を全て抜いたり、薬を変更したりせず、普段の食事やサプリメントを医療者に伝えてください。この注意を、全ての抗凝固薬に同じように当てはめることもできません。4
骨への役割と、補充で骨折が減るかは分ける
ビタミンKと骨折、骨密度、心血管疾患を調べた研究はあります。しかし、2025年版の日本の報告書は、研究が十分でなく結果も一致しないため、疾病予防の目標量を設定していません。栄養素の摂取、血中の骨関連指標、骨密度、実際の骨折は、それぞれ違う評価項目です。1
日本では、メナキノン-4の製剤が骨粗鬆症治療に使われます。ただし、医師が病状に合わせて使う薬と、一般の食事中のビタミンKは、目的・用量・管理が異なります。薬剤の研究から、食品やサプリメントを増やせば同じ結果になるとは言えません。1 2
上限未設定は、無制限の追加を勧める意味ではない
日本の基準では、ビタミンKの耐容上限量は設定されていません。一方で、通常の食事で不足が起きることはまれとされています。必要性を知ることと、濃縮製品を追加することは分けて考えます。上限未設定でも、ワルファリンとの重要な相互作用はなくなりません。1 4
新生児・乳児は、胎盤を通して届く量が少ないこと、母乳中の量が少ないことなどから、成人とは条件が違います。日本の乳児の基準は、医療現場で予防的なビタミンK投与が行われることを前提にしています。母親が食品を増やすことを、その投与の代わりにはしないでください。1
ビタミンKで見るべきなのは、成分の形、凝固を支える量の指標、服薬や年齢の条件です。骨に必要という説明も、その先の補充効果とは区別して受け止めます。