ビタミンB2はリボフラビンとも呼ばれ、細胞が栄養素からエネルギーを得る反応などを助ける水溶性ビタミンです。体内ではFMN、FADという補酵素になり、物質の間で電子を受け渡す役割を担います。1
脂質の代謝にも関わりますが、B2を多く摂れば、その分だけ体脂肪が減るという意味ではありません。何を助ける成分なのかを知ると、日本の必要量がエネルギー消費量に対応して決められている理由も見えてきます。1
食品のリボフラビンが、FMN・FADになる
ビタミンB2は、B2としての働きを持つ化合物の総称です。食品中には、遊離したリボフラビンのほか、FMN(フラビンモノヌクレオチド)やFAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)などの形で存在します。1
食品のFMNやFADは、消化管でリボフラビンに分解されて小腸から吸収されます。体内で再びFMNやFADへ変えられ、酵素の助け役である補酵素として使われます。「食品に何mgあるか」と「そのまま何mgの補酵素が届くか」は、同じ問いではありません。1
吸収や利用は食品の形などにも左右されます。研究で得られた特定の食品の利用率を、全ての食品や個人に共通する一定の割合として扱うことはできません。1
電子の受け渡しが、エネルギー代謝を支える
細胞が糖質や脂質などを利用するときには、物質を順番に変えながら電子を受け渡す反応が進みます。このような電子のやり取りを伴う反応が、酸化還元反応です。FMNやFADは、電子を受け取ったり渡したりできるため、その反応を助けます。1
関わる経路には、クエン酸回路、電子伝達系、脂肪酸を分解するβ酸化などがあります。クエン酸回路と電子伝達系は、細胞が利用できる形のエネルギーをつくる仕組みの一部です。β酸化は、脂肪酸を段階的に切り分ける過程を指します。1
B2は、これらの仕組みが働くために必要です。ただし、B2自体がカロリー源になるわけでも、補酵素を増やすだけで反応が無制限に速くなるわけでもありません。「代謝に必要」という生理機能と、「十分な人の体重や疲労に、追加摂取で望ましい変化が出る」という臨床的な効果は、分けて確かめる必要があります。
必要量は、尿中への排泄が増え始める点から算定
日本の2025年版食事摂取基準は、口角炎などの欠乏症を防ぐ最小量ではなく、摂取量を増やしたとき、尿中へのB2排泄が増え始める点を必要量の算定に用いています。体内の必要が満たされ、余剰が排泄に回り始める状態を捉える考え方です。1 2
報告書では、この点に相当する量を、エネルギー1,000kcal当たり0.50mgとして整理しています。これを性・年齢別の推定エネルギー必要量に合わせ、必要量の個人差を考慮して推奨量を算定します。1
- 摂取量と排泄量の関係を調べる尿中排泄が増え始める摂取量を、体内の必要が満たされる目安として使う。
- エネルギー必要量に合わせる0.50mg/1,000kcalを参照値として、性・年齢別の推定平均必要量を算定する。
- 個人差を考慮する推定平均必要量の1.2倍を基に推奨量を算定する。
報告書190ページを基にした整理です。基準表は身体活動レベル「ふつう」の推定エネルギー必要量を用います。仕事や運動による消費量が異なる人の必要量を、表だけで厳密に決めることはできません。1 2
これは、研究条件下で摂取量と排泄量の関係を調べる方法です。尿の見た目や一回の排泄量を使って、本人がB2の不足や必要量を判断する方法ではありません。
成人の推奨量と、妊娠・授乳期の付加量
| 年齢 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 18〜29歳 | 1.6 | 1.2 |
| 30〜49歳 | 1.7 | 1.2 |
| 50〜64歳 | 1.6 | 1.2 |
| 65〜74歳 | 1.4 | 1.1 |
| 75歳以上 | 1.4 | 1.1 |
妊婦の推奨量への付加量は+0.3mg/日、授乳婦は+0.6mg/日です。年齢別の値に足す量であり、付加量だけが一日の必要量ではありません。妊娠による需要や母乳を通じた供給を考慮しています。1 2
推奨量は、習慣的な摂取を考える指標です。一日の食事が値を下回ったことと、欠乏症があることは同じではありません。
牛乳と納豆は、実際に食べる重さに直して比べる
B2の含有量を日常の食事に結びつけるには、100g当たりの数字を、食べる量へ直して考えます。次の量は計算例で、全員に必要な組み合わせや献立を示すものではありません。3 4
| 食品・仮の量 | ビタミンB2量 |
|---|---|
| 普通牛乳 200g | 0.30mg 0.15mg/100gから計算 |
| 糸引き納豆 40g | 約0.22mg 0.56mg/100gから計算 |
牛乳200gを200mLと同じ値だと決めつけたり、納豆40gに別添のたれまで含めたりすると、計算の条件が変わります。食品成分表の値にも食品ごとの変動があり、計算値は体内で利用される量の実測値ではありません。1 3 4
口角炎だけで不足を決めず、上限未設定を過信しない
B2の欠乏では、口唇炎、口角炎、舌炎、脂漏性皮膚炎などがみられます。ただし、口や皮膚の症状はB2に特有ではありません。症状が続く場合に「B2不足だ」と自己診断して、補充だけで対応し続けることは避けます。1
日本の2025年版では、B2の耐容上限量は設定されていません。摂取量が多くなると吸収される割合が下がり、吸収後の余剰も尿へ排泄されますが、上限未設定は、どんな量でも長期の安全性が確認されたという意味ではありません。疾病予防のための目標量も設定されていません。1
B2を理解する軸は、電子の受け渡しを支える役割と、エネルギー必要量に対応した食事の基準です。欠乏を避けることを、量が多いほど代謝や皮膚の状態がよくなるという期待へ広げないことが大切です。