運動の「週150分」と「1日60分」の違い
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運動の目安を調べると、世界保健機関(WHO)の「週150分」と、日本の厚生労働省の「1日60分」が出てきます。7日で計算すると150分と420分。どちらに合わせればよいのでしょうか。
先に答えると、この二つは同じ活動を同じ方法で数えた数字ではありません。WHOは有酸素身体活動を強度別に週何分行うか、日本のガイドは一定以上の強度の身体活動を週何メッツ・時行うかを示し、歩行なら1日60分程度と説明しています。単に大きい方を「より正しい目標」と考えると、基準の意味を取り違えます。12
二つの目安は、何を数える?
WHOは18〜64歳の成人に、中強度の有酸素身体活動を週150〜300分、または高強度を週75〜150分、もしくは両者を組み合わせることを勧めています。主要な筋群を使う中強度以上の筋力活動も週2日以上が目安です。1
日本の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、成人に、3メッツ以上の身体活動を週23メッツ・時以上行うことを勧めます。その具体例が「歩行または同等以上の身体活動を1日60分以上」で、1日の合計で約8,000歩以上という目安も併記しています。さらに、息が弾み汗をかく程度の運動を週60分以上、筋力トレーニングを週2〜3日行う目安も別に示しています。2
中強度の有酸素身体活動
高強度なら週75〜150分。中強度以上の筋力活動は週2日以上。3メッツ以上の身体活動
歩行相当以上なら1日60分が具体例。筋トレは週2〜3日。WHOの週150分には通勤の歩行を入れてはいけない、という意味ではありません。WHOも、仕事、移動、家事、余暇の身体活動を数えられると説明しています。3 日本のガイドも、家事や通勤などの「生活活動」と、計画的に行う「運動」を身体活動に含めます。2 ただし、活動時間を数える際には、それぞれの目安が指定する強度を確認する必要があります。
「メッツ」と「歩数」は同じ単位ではない
メッツは、座って安静にしている状態を1として、活動の強さを表す単位です。厚労省の解説では、通常の歩行や掃除機をかける動作は約3メッツ、やや速歩や通勤時の自転車は約4メッツの例として挙げられています。4 「メッツ・時」は、その強度を何時間続けたかを合わせた量です。例えば3メッツの活動を30分続ければ、計算上は1.5メッツ・時になります。
3メッツちょうどの活動を毎日60分、7日間行った場合は21メッツ・時です。日本のガイドが示す「週23メッツ・時」と「1日60分」は厳密な等式ではなく、後者は歩行相当の活動で考えるための実践上の目安です。2 時間だけを23メッツ・時の達成判定に使うことはできません。
これに対して歩数は、活動の強度を直接示しません。厚労省の成人版推奨シートは、60分の歩行を約6,000歩とし、3メッツ未満の家事などの生活活動に相当する約2,000歩を加えて、1日合計約8,000歩と説明しています。これは概算で、60分歩けば必ず8,000歩になるという換算ではありません。5 同じ歩数でも、歩く速さや、ほかに行った活動は人によって異なります。歩数だけでWHOの「中強度の有酸素活動を何分」や日本の「週23メッツ・時」を判定することはできません。
一週間の生活に置くなら
WHOの下限である週150分は、中強度に当たる活動を平日5日に30分ずつ行うと150分になります。これは計算の一例で、毎日必ず30分続けなければならないという指示ではありません。通勤や買い物の歩行も、強度の条件に合う時間なら候補になります。13
一方、日本の1日60分は、ジムに60分通うという意味ではありません。通勤、仕事中の移動、家事、散歩など、日常の身体活動も含めて考える目安です。ただし、電車で座っている時間や、ごく軽い作業まで「歩行相当以上の活動」として足してよいわけではありません。2
まず数日、動いた場面・時間・おおよその強さを見てみると、自分の生活の中で増やせる余地が分かります。運動のために新しい時間を確保する前に、すでに歩いている時間や、長く座り続けている場面を見つける方法です。
達成できない週と、対象が違う人
どちらのガイドも、数字に届かない活動を「ゼロ」とは扱っていません。WHOは少しの身体活動でも何もしないよりよいとし、日本のガイドも個人差を踏まえ、可能なところから今より少しでも多く動くことを勧めています。32 最初から目安の達成だけを目標にせず、現在の量を知ることが出発点になります。
年齢による違いもあります。日本の高齢者向け推奨では、歩行相当以上の身体活動は1日40分以上、約6,000歩相当が目安で、筋力・バランス・柔軟性などを組み合わせる運動も勧めています。6 成人版の「1日60分」を、そのまま全員に当てはめるものではありません。
持病や服薬、関節の問題がある人が新しく運動を始める場合は、個別の健康状態を確認する必要があります。厚労省の安全情報は、運動前・運動中の体調確認を勧め、胸痛、めまい、いつもと違う強い疲れなどが出たときは中止するよう案内しています。7 不安がある場合は医療者に相談してください。
「週150分」と「1日60分」は、競合する数字というより、強度と時間をどう見るかを示す別々の物差しです。生活の活動を見直す際は、時間だけでなく何を、どのくらいの強さで行ったかまで見てください。
この情報の読み方
WHOと日本の集団向けガイドラインを読み解く記事です。個別研究の効果を格付けしていません。
WHOは成人に週150〜300分の中強度の有酸素身体活動などを、日本のガイドは成人に歩行相当以上の身体活動を1日60分以上行うことを勧めています。
150分に届かない活動は無意味、または全員が同じ運動量を安全にこなせるとは言えません。
この情報の限界
- どちらも集団向けの目安で、病気、けが、妊娠などがある人への個別の運動処方ではありません。
- WHOの強度別の時間と、日本のメッツ・時や歩行相当の時間は、同じ基準で集計した数字ではありません。
- 歩数や活動名だけでは強度や負担を確定できません。体力や歩く速さ、健康状態によって変わります。
- 推奨量に達したことだけで、食事や睡眠、座り続ける時間など他の条件を評価できません。
参考資料
- WHO guidelines on physical activity and sedentary behaviour ↗World Health Organization · 2020
- 「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」推奨シート:成人版 ↗厚生労働省 e-ヘルスネット · 2024
- WHO guidelines on physical activity and sedentary behaviour: at a glance ↗World Health Organization · 2021
- メッツ / METs ↗厚生労働省 e-ヘルスネット · 2025
- 「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」推奨シート:成人版(PDF) ↗厚生労働省 · 2024
- 「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」推奨シート:高齢者版 ↗厚生労働省 e-ヘルスネット · 2024
- 「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」情報シート:身体活動・運動を安全に行うためのポイント ↗厚生労働省 e-ヘルスネット · 2024