ビタミンDは、カルシウムやリンを体内へ取り込む働きなどに関わり、骨の石灰化を支える成分です。食事から摂るほか、紫外線を受けた皮膚でもつくられます。何を食べたかだけでなく、季節や屋外で過ごす条件も体内の状態に関係するのが特徴です。1
一方、骨に必要なことから、「多く補給すれば、それだけ骨折しにくくなる」とは言えません。成分の役割、日本の目安量、食品の量、そして追加補給を調べた試験を分けて見ていきます。
食事と皮膚から得て、肝臓・腎臓で代謝する
食品のビタミンDには、きのこ類に含まれるビタミンD2と、魚などに含まれるビタミンD3があります。皮膚でも、紫外線の作用によってD3がつくられます。日本の食事摂取基準は、食事のD2とD3を区別せず、合計量で示しています。1
体内に入ったビタミンDは、まず肝臓で「25-ヒドロキシビタミンD」になり、続いて主に腎臓で活性型へ代謝されます。活性型は細胞にある受容体に結びつき、遺伝子の働きを調節します。その主な働きに、腸からのカルシウム・リンの吸収や、腎臓での再吸収を促すことがあります。1
- 得る:食品から摂る、または紫外線を受けた皮膚でつくる。
- 肝臓で変える:25-ヒドロキシビタミンDへ代謝する。
- 活性型にする:主に腎臓で代謝され、カルシウムやリンの調節などに働く。
ビタミンDが欠乏すると、骨の石灰化に問題が生じ、小児ではくる病、成人では骨軟化症につながります。これは欠乏を避ける必要がある理由です。ただし、この生理的な役割だけで、すでに足りている人がさらに摂る効果まで証明できるわけではありません。1
日本の成人の目安量は9μg。どう決まった?
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」で、18歳以上の男女のビタミンDの目安量は9.0μg/日です。推奨量ではなく目安量であることが重要です。食事の供給と皮膚での産生が重なるため、食事だけの必要量を一律に決めるのが難しい成分なのです。1 2
日本の策定報告書は、一定の日光曝露を考慮した北欧諸国の基準と、日本の食事調査から把握した摂取量を参考にしています。実行可能性も踏まえて、北欧の10μg/日と国内の摂取量の中間を出発点に算定し、成人は男女とも9.0μg/日としました。日本人について、日光・摂取量・血液中の濃度の関係を調べた研究がまだ限られることも述べています。1
| 指標 | 量と意味 |
|---|---|
| 目安量 | 9.0μg/日。習慣的な食事を考える目安。個人の不足を診断する境界ではない。 |
| 耐容上限量 | 100μg/日。過剰摂取による健康障害を避けるための指標で、摂取を目指す量ではない。 |
μgはマイクログラムで、1mgの1,000分の1です。サプリメントなどではIUという単位も見かけます。ビタミンDは1μg=40IUなので、9μgは360IU、100μgは4,000IUに相当します。単位だけを見ず、何の指標かまで揃えて読む必要があります。1
日光は何分浴びればよい?
誰にでも共通する分数は、ここでは決められません。皮膚でのビタミンD産生は、緯度、季節、屋外活動量、日焼け止めの使用などで変わります。厚労省の基準も、日常生活で可能な範囲の適度な日光浴を心掛け、日照時間を考慮するよう注記しています。1 2
そのため、「9μg食べれば屋外に出なくても同じ」「日光だけで必ず足りる」と、片方だけで判断することはできません。日照機会が少ない人や施設で暮らす高齢者などでは、自立した一般の成人と条件が異なります。屋外で過ごす条件や食事を含めて考える必要があります。1
この基準から、日焼け止めをやめたり、意図的に強い紫外線を浴びたりする指示は導けません。個人の産生量を、天気や食事の数値から正確に足し算することもできません。
食品にはどのくらい含まれる?
文部科学省の成分表では、しろさけ・焼き100gにビタミンD39.0μg、鶏卵・全卵・生100gに3.8μg、普通牛乳100gに0.3μgが含まれます。食品の種類だけでなく、調理状態と食べる重さを揃えることが大切です。3 4 5
| 食品と重さ | ビタミンD | 出典 |
|---|---|---|
| しろさけ・焼き80g | 31.2μg | 39.0μg × 0.8 |
| 鶏卵・全卵・生50g | 1.9μg | 3.8μg × 0.5 |
| 普通牛乳200g | 0.6μg | 0.3μg × 2 |
卵は殻を除く可食部、さけは焼いた後の可食部、牛乳はmLではなくgでの計算です。生の食材の値を、調理後の重さにそのまま掛けてはいけません。商品や調理による違いもあり、特定の食べ方の安全性や、体内で利用される量を表す表ではありません。3 4 5
さけの例が9μgを上回っているのは、目安量が上限ではないためです。一方、この表の量を毎日組み合わせるよう勧めるものでもありません。習慣的な食事の中で、どこからビタミンDを摂っているかを知るための材料です。
骨に必要でも、追加補給で骨折が減るとは限らない
この違いを示す一例が、2022年に発表された米国のVITAL試験の骨折解析です。男性50歳以上・女性55歳以上の25,871人を対象に、ビタミンD3を1日2,000IU(50μg)追加する群とプラセボ群を比べました。追跡期間の中央値は5.3年で、骨折は質問票だけでなく診療記録を取り寄せて判定しています。6
少なくとも1回の骨折が確認されたのは、ビタミンD群12,927人中769人、プラセボ群12,944人中782人でした。単純な人数の割合では約5.95%と約6.04%ですが、追跡時間などを考慮した主解析でも、明確な差は示されませんでした。骨折のハザード比は0.98、95%信頼区間は0.89〜1.08です。これは「全く同じ」と証明した値ではありません。6
ただし、この試験は欠乏や骨粗鬆症を条件に参加者を集めていません。開始時の血中濃度を測定できた16,757人のうち、25-ヒドロキシビタミンDが12ng/mL未満だったのは401人(2.4%)でした。対象者の多くと、明らかな欠乏の治療が必要な人とでは、出発点が違います。6
ここから言えるのは、この対象・量・期間では追加補給による骨折減少を確認できなかった、ということです。欠乏の治療が不要とも、ほかの量やカルシウムとの併用も無意味とも結論づけられません。研究費は米国NIHが支援しています。著者の利益相反は出版社の別掲フォームへの開示が案内されており、利益相反がないと評価したものではありません。6
血液の指標とサプリの量を、自分だけで結びつけない
ビタミンDの栄養状態を見る指標は、通常、血中の25-ヒドロキシビタミンDです。食事と皮膚での産生の両方を反映するためです。名前が似ていても、活性型ビタミンDの濃度と同じものではありません。1
食事摂取基準をつくる際の参照値と、医療で不足・欠乏を判定する基準は、目的が異なることがあります。検査の数字だけを見て、一般向けの9μgや試験の50μgから自分の補充量を決めることはできません。1
多量のビタミンDを継続して摂ると、高カルシウム血症、腎障害、軟組織の石灰化などが起こり得ます。成人の耐容上限量100μgは、そこまで増やす目標ではありません。複数のサプリを使う場合には量が重なります。骨粗鬆症や腎臓病で治療中の人、ビタミンDやカルシウムの薬を使っている人は、追加する前に主治医や薬剤師へ確認してください。1
日々の食事と屋外での生活条件を知ること、検査や治療が必要な場合の判断を分けること。この二つを踏まえて読むと、ビタミンDの「必要」と「追加で摂る効果」を混同せずに考えられます。